2012年3月19日月曜日

iPadアプリ「細川家の名宝」。古の美を味わう電子絵巻。

Hosokawa Family
Eisei Bunko Collection
開発: CROSS BORDERS Inc.
¥600(2012.3.19現在/期間限定価格)
カテゴリ: ブック

 このアプリは、長さ20mの絵巻物(室町時代の物)を、原寸大で途切れる事なく閲覧する事が出来る。iPadの画面をスクロールすると、次々に絵巻の続きが現れるのだ。画像を拡大して細部を堪能する事も出来る。ユーザーは、アプリのペイント機能で禅画を模写し、Twitterへ投稿出来る。絵巻物に関する感想・新発見・質問をTwitterに画像付きで投稿し共有出来る。もちろん作品解説も楽しい。このアプリには英語版とフランス語版があり、海外のユーザーも楽しめる。


 もし印刷裁断された書籍で、この絵巻物を見るとしたら。長さ20mの絵巻物の連続性を体感出来ない。紙のページを捲るたびに絵は途切れてしまう。もし美術館で、この絵巻物を見るとしたら。開かれている一部分しか見る事が出来ない。手元で細部を確認する事も出来ない。それでも、美術館で実物のを絵巻物を見たいと思う。本物の微妙な色合い、画家の息づかいとメッセージは、実物の絵からこそ伝わってくる。実物の絵画でなければ体感出来ないエネルギーもある。

 このアプリがあれば、“美術館に行く必要がない”という訳ではない。美術館で、実物の絵巻物を最大限に味わう為に、このアプリがあるのだ。iPadによって、様々な角度から情報を吸収し、情報を生産発信し、情報を共有する。実物を前にして、それらを確かめる。それらによって、この絵巻物を隅々まで味わい尽くすのである。

 iPadという新しいデバイスは、作られた情報を 一方的に受け取るだけの道具ではない。情報を狩り、情報を生産し、情報を共有する為の道具だ。そして、この最新の電子機器が、古の絵巻物という閲覧フォーマットを現代に蘇らせた。絵巻物という形式は、古来より日本に存在するが、いつの間にか、忘れ去られたようだ。しかしiPadという最新デバイスには、この古の絵巻物形式が、殊の外マッチするのである。新しいものが古いものを蘇らせるのだ。

 このアプリは、新iPad(第3世代)で起動させると、不具合が発生するようだ。新iPadの解像度との整合性による問題だと推測するのだが。このようなアプリこそ、新iPadの高解像度ディスプレイで堪能したいものだ。早急なアップデートが望まれる。

(2012年3月23日現在 アップデートされました。新iPad<第3世代>に対応済みです。)

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