2013年3月27日水曜日

iPhoneが、360°回転のダンスを披露するアプリ?!

 『Cycloramic』は、iPhone本体だけで 周囲360°の映像やパノラマ写真を撮影できるアプリだ。iPhone以外の道具は必要ない。「Go」ボタンを押すと、このアプリがiPhoneのバイブレータを制御開始。テーブル上でバランスを取りながら自動回転するのだ。iPhone内蔵のジャイロスコープによる姿勢制御機能と内蔵コンパスによる方位磁針機能を利用。設置面に合わせた最適な振動数を常に割り出ことによって、iPhoneを適切に回転させるらしい。

 このアプリが凄いのは、iPhoneが自立して回転する美しい姿を見せてくれることだ。ぜひ下にインサートした動画でその動きを味わっていただきたい。 その姿は、まるでiPhoneがバレエやダンスを披露しているかのようだ。スリムでスタイリッシュなiPhoneが、その場で自動回転している姿は、それだけで素晴らしいアート。機能性も素晴らしいのだが、それ以上に素晴らしいのは、この自動回転している “姿の美しさ” そのものである。iPhoneが回転する姿を初めて目にする人は、必ず驚くであろう。水平なテーブルの上でなければキチンと回転しないので、カメラ・アプリとしては、使える場面が限られる。だが、この自動回転の動きを見られるだけでも、このアプリを手に入れる価値がある。このアプリは、iPhone5で最も的確に動作するようだ。iPhone4やiPhone4Sでは、うまく動作しないようなので注意が必要。iPhone5とiPhone4やiPhone4Sでは、バイブレータの構造が違うらしい。

本来 iPhone5のバイブレータ機能は、決してパノラマ写真を撮影するために搭載されたものではない。音を発せずに電話の着信やメール受信を知らせるために搭載されているものだ。『Cycloramic』の開発者は、このバイブレータ機能を全く別な目的に使うことを思いついたのである。アップルが世に送り出したiPhone5という “体験” に触発されたクリエイターが、アップルも思いつかないような新しい “体験” を生み出した。あるアイデアが全く別なアイデアを生み出す源となり、連鎖的に新しいアイデアが生み出されて行く。アップルが世に送り出す商品には、このような刺激の源がたくさん詰まっているように感じる。

それは、アップルが “端末” を売っているのではなく “体験” を売っているからだろう。iPhone本体の外見的美しさだけではなく、ボタンの押し心地や材質表面の手触り感、パッケージ開封のプロセスに至るまで、アップルの細かなこだわりが貫かれている。端末という物体そのものだけではなく、それら全てを総合したものがアップルの売っている商品だ。iPhone5の回転する姿、それ自体を美しいと感じるのは、それがアップルの哲学と非常にマッチしているからだろう。『Cycloramic』というアプリの商品価値は、それによって仕上がった映像や写真という結果に存在するのではない。美しく自動回転する動作とプロセス、それを目の前で “体験” できるところに存在するのだ。あくまでもカメラ・アプリなのだから、普通なら、それによって撮影される映像や写真の色調、解像度などのスペックに考えが縛られそうなものだ。撮影するプロセス、体験それ自体に商品価値を発生させてしまうのは、アップルとクリエイターの「美しくて幸せな共犯関係」がなせる技ではないだろうか。アップルの生み出す “体験” には、クリエイターの脳みそを刺激する魔法がたくさん詰まっている。

                                               YouTubeで公開されている『Cycloramic』のデモ映像


2013年3月21日木曜日

「アップル神話」は崩壊したのか?

 アップルの株価下落が話題となった。ピーク時に700ドルを超えた株価は約4割も下がり、株式時価総額・世界1位の座をエクソンモービルに明け渡したのだ。アップルの成長性に疑問符が付き、市場の評価はガタ落ちだ。およそ1年前には「1年以内に1000ドルを突破する」と主張するアナリストがいた。何とも予想とかけ離れた状況になったものだ。ただし私には、株式市場のアップルに対する評価は加熱し過ぎていたように思える。異常なまでの熱狂ぶりだったのではないか。

 アップルに対する市場の評価が落ちている最大の理由は「成長のシナリオ」が見えないという事だろう。“iPhone5” や “iPad mini” など既存商品の発展形はあるものの、これまで見たこともない全く新しいアイテムが、ここしばらく発売されていない。競合他社は、アップルが切り開いた新しいジャンルで、より高性能な商品をより低価格で発売すれば高い評価を得るのかもしれない。だがアップルは、そういう訳にはいかない。iPhoneやiPadというハードが如何に高度化し続けても、世界はガッカリし続けるだろう。アップルが、あっと驚く新しい “体験” を提供してくれることを、世界は望んでいる。その “体験” は、全く新しいデバイスかもしれないし、iPhoneやiPadを内包した画期的な新サービス・システムかもしれない。アップルは、画期的なイノベーションを引き起こし、全く新しい体験価値を創造する事を常に求められている。市場が期待しているのは、単に売上高や利益率がアップする事ではない。考えてみれば、これは相当にレベルの高い要求だ。アップルだからこそ、このような結果を期待されてしまうのだろう。アップルは、これまでに次々と革新的な商品を世に送り出し、人々のライフスタイルを何度も何度も変えて来た。

  アップルが次に発売するアイテムとして噂されているのは、アップル流の薄型テレビである『iTV』、アップル流のカーナビ『iNavi ( ? )』。そしてアップル流の腕時計『 iWatch』など様々なものがある。その他にも、『iCamera』、『iGlasses』、『iCar』などが登場する可能性もある。アップルがiPhoneで電話を再発明したように、腕時計やカーナビ、そして車を再発明したら、一体どんなものが出来上がるのだろう。きっと根本的な概念から再構築し、ライフスタイルの変革を目指すのだろう。

 直近で登場しそうなのは『iTV』である。 もしかしたら今年後半にも登場するかもしれない。「アップル神話」の崩壊が始まっているのかどうか…  それは、そう遠くない時期に自ずと見えて来るのかもしれない。アップルがこれまで通り、革新的な商品を世に送り出し続けるのは相当に難しいだろう。しかしアップルのように “変な” 企業が消え去ってしまうのも、チョッと寂しいものだ。アップルは、誰もが見放したかのように思えた “タブレット端末” に手を出し、活気のある市場へと蘇らせてしまう企業だ。トム・ソーヤーやハックルベリーのように、冒険好きな奴もいないと…  世の中は楽しくない。