2012年3月15日木曜日

iPadアプリ「元素図鑑」。これはもう電子書籍ではない。

The Elements in Japanese
開発: Element Collection, Inc
¥1,200(2012.3.15現在) カテゴリ: ブック

 このアプリは、「元素周期表」というものを、iPadならではの方法で魅せてくれる。iPad独自の機能を、意味ある場面で効果的に結合させている。これぞ、iPadの基本的世界観を見事に体現したアプリである。

 「元素」とは、この世界の物質を構成する基本単位である。「元素周期表」は、性質の似た元素同士が並ぶように、決められた規則に従って配列した表なのだ。左から右へ、そして上から下へ行くほど 原子番号の大きな元素が並ぶ。原子番号とは「周期表」における順番・位置を表わしたものである。故に この表では 左右の並びにも、上下の並びにも意味がある。その並び方に元素の性質が表れているからだ。

 iPadというデバイスの場合、紙に印刷された書籍の様に 左右にページを捲るというフォーマットに限定されない。 空間感覚として、上下左右、自由自在に画面進行を設定出来る。元素周期表も、上下左右の空間感覚に意味がある。iPadと元素周期表の空間感覚は見事にマッチするのだ。 わざわざ、紙のページを捲るような画面デザインを創る必要はない。このアプリでは、周期表上の元素をクリックすると、直接 各元素の個別ページに飛べるし、そこから左右の近似性ある元素にページ移動する事も出来る。


 iPadの凄さは、紙に印刷された書籍の電子化という携帯性にあるのではない。ページを捲るという感覚から、人間を解き放つところにある。“電子書籍”という言葉は、既存の出版物を電子データ化してデバイスに取り込み、電車内や外出先で自由自在に読むという利便性や携帯性の魅力を纏っている。しかし、iPadアプリは、もはや電子書籍という枠を超えた世界に到達している。既存書籍の形式に捕らわれず、全く新しい情報伝達フォーマットを生み出せるのだ。指先で物体の側面を自在に動かし、静止画も動画もコンテンツに溶け込んでいる。必要に応じてネットワークにアクセスし、適宜更新された情報も入手出来る。視点は、画面内を自在に飛翔する。この様な 豪快なアプリを 電車の中でゆっくり味わう事は難しいだろう。周りの人々の視線は、iPadのディスプレイに釘付けになる。このようなアプリは、静かな場所に腰を据えて、ゆったりと味わいたい。

 「元素図鑑」は、iPad用アプリとiPhone用アプリの2種類がある。1つのアプリで両方に対応するのがユニバーサルアプリなので、「元素図鑑」はユニバーサルアプリではない。iPhone版の「元素図鑑」に関しては、別途 取り上げたいと思う。

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