2012年3月6日火曜日

アップルは「体験」を売り、ソニーは「端末」を売る。

 iPad 最大の魅力とは何か? それは、個性的で味わい深いアプリを楽しめる点にあると、私は考える。至高のアプリ群が存在しなければ、iPadは、ただの持ち運べるディスプレイである。このデバイスの形状とスペックだけ眺めていても、思い浮かぶ用途は限られる。電子書籍専用端末か、Webブラウジングに適した端末であることくらい。しかし、世界中のクリエイターが開発したアプリをiPad上で動かすことにより、iPadは消費者の想像を超えた光景を眼前に登場させる。

 ハードとアプリの一体化した世界観、その体験こそ、アップルが販売している商品である。他社のタブレット端末と iPadとの差異は、そこにある。iPadとソニータブレットのTVCMを比較すると、その違いが際立つ。

 iPadの日本発売時に放送されたTVCMには、画面内に様々なアプリが登場する。ここに世界観が凝縮されている。iPadの形状とスペックだけ分析しても、その本質は見えない。iPadの形状とスペックに統合された、芳醇なアプリ群を擁していることがアップルの強みである。アプリの質が重要なのだ。このCMでは、ハードを見せるのではなく、画面内のアプリと新しいライフスタイルを消費者に強くアピールする。


 一方で、ソニータブレットの日本発売時に放送されたTVCMは、iPadのCMとは対極的である。その画面内に具体的なアプリは登場しない。オーロラ(?)のような光が、ウネウネしているだけである。これでは、このデバイスによって何が出来るのか、消費者の想像力を刺激しない。情報を出し惜しみする場合ではないのである。おそらく ソニー経営陣にも、このデバイスで何が出来るのか 斬新なイメージが浮かばないであろう。ソニーには、このタブレットだけが与えてくれる「新しい何か」を、より具体的に提示して欲しい。誠に残念だ。このCMで、アピールされているのは、手にフィットする形状だけである。


 アップルは 世界中のクリエイターと協働し、これまでと違うメディア「体験」を提供することを目指している。ソニーが目指しているのは、映画・音楽・ゲームなど様々なコンテンツにアクセス出来る、高度な多機能「端末」を提供することである。

 それでは、なぜアップルは 世界中のクリエイターを惹き付けてやまないのか? 次回は、その点について考える。

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