2012年6月1日金曜日

キッチンに、iPadのある生活。

 バング&オルフセンは、デンマークのオーディオ・ビジュアル機器ブランド。最大の特徴は、スタイリッシュなデザインだ。「BeoPlay A8」は、左右に円錐形のスピーカーを配置。中央のドックに、iPad、iPhone、あるいはiPodをセットして音楽を聴く。操作性に優れた、機能的で美しいデザインだ。ただし価格は120,750円。iPad本体よりも高い。バング&オルフセンは、創業87年の高級オーディオ・ビジュアル・ブランド。このブランドは、業界最高峰の音響性能を誇っている。このスピーカードックも、壁の前、コーナー、または部屋の中央と、設置位置に合わせて3段階に手動でサウンドを調節可能。AirPlay機能にも対応している。(ちなみに、バング&オルフセンから発売されている“テレビ”の価格は、システム一式で 200万円を超える。)

 キッチンにiPadのある生活を想像してみよう。大好きな音楽を聴きながら、料理を楽しもう。非力なスピーカーはiPadの欠点だが、バング&オルフセンがあれば大丈夫。iPadには、キッチンにおいて便利なアプリも揃っている。1年分のサラダ・レシピを教えてくれるアプリ。手元にある食材から、作れる料理を検索するアプリ。iPadなら、レシピが読みやすい画面サイズだ。キッチンタイマーもアプリに組み込める。料理毎に時間を合わせ済みのタイマーを、個々に組み込めるのだ。カレーを30分煮込んでいる間に、iPadで雑誌を読んだり、Eメールをチェックしておこう。タイマーが鳴ったら、料理の続きだ。高解像度ディスプレイで見るレシピ内の料理写真は、色鮮やかだ。出来上がった自分の料理も、iPadの内蔵カメラで即座に写真を撮っておこう。写真編集アプリiPhotoで色調補正をしてから、Webアルバムにまとめる。その場で、FacebookやGoogle+で全世界に公開。あなたの料理を気に入ったら、イタリアからフランスから、コメントが届くかもしれない。iPadには、カロリーコントロールを手助けするアプリもある。今日の体重を記録に付けて、健康管理にも気をつけよう。自分のオリジナル料理を、写真や文章でまとめておけば、自分だけのレシピ・ブックが出来上がる。いつの日にか、あなたのお嬢さんが結婚する時に、それを渡す事も手軽に出来る。データをクラウド上に保存しておけば、持ち運びにかさばる事もない。“我が家の味”を、次の世代に引き継ごう…。

 アップルが売っているのは、iPadという“端末”ではない。iPadという“ライフスタイル”だ。新しい“体験”だ。バング&オルフセンが売っているのも、オーディオ・ビジュアル機器そのものではない。それらがもたらす新しい音楽の聴き方、新しいライフスタイルだ。だから、どちらの企業もスタイリッシュなデザインに拘り抜く。波長が合うから、コラボレーションも成り立つのだろう。デザインそれ自体は、好みが分かれるところだ。しかし、新しい事に挑戦する姿勢は、誰もが認めるだろう。新しいライフスタイルの提案は、女性に対しても積極的に行われている。キッチンの在り方を、変えようとしているのだ。

 本来なら、日本のソニーが、こんな新しい体験を提案してくれるところだった。だが、今のソニーは巨大になり過ぎた。ソニーの携帯電話部門は、ゲーム機能を付加した携帯電話を作る。ソニーのゲーム部門は携帯電話の電波を利用する携帯型ゲーム機を作る。ソニーの電子機器部門は、携帯型ゲーム機ほどのサイズで多機能端末を作り、他のタブレット端末に対抗しようとする。コンセプトが重なる物を、3つの部門が別々に発売する必要はない。1つの製品に絞れば、宣伝費も効果的に使えると思うのだが…。それぞれの部門が売上げを立てねばならないから、そういう訳にもいかないのだろう。もはや横の連携がキチンと取れているとは思えない。

0 件のコメント:

コメントを投稿